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転職したくなったら(その2)

35歳で民間メーカーを退職した。一応タイミングは計った。丁度会社から有利な条件が出た事,このまま続けても目標である学位取得が難しそうな事等々である。更に細かい事を言えば,姑息ながら退職する直近3カ月間は手当を含めて収入を増やしておく方が良い。裁量で残業が許されるならば,めいっぱいやった方が良い。失業給付がその分増えるからだ。

退職の鉄則は,次の職場を決めてからだ。しかし,この時は訳あって次の就職先を決めておらず,失業給付をもらいながら求職活動をした。バブル崩壊直後でまだそれ程不況の色は濃くなかった。しかし,中々これはと思う再就職先がないまま,あっと言う間に210日の給付は終わり,虎の子の退職金200万円も底をついた。企業時代に貯めた貯金はいくばくか持っていたが,こんな感じなら,それもあっという間に無くなるだろうと感じた。

離職時のお金の減り方は尋常ではない。
結婚もしており,子供も一人いたが,小さいし,それ程かかる訳ではない。
何にかかるって,先ずアパート代だ。会社の時は,借り上げ社宅だったから,実際のアパート代の1/3程の値段で入っていたのが,退社後は丸々掛かってくる。当初は妻の実家に転がり込んでいたが,だんだん不自由になってくる。妻がグランドピアノを持っていたので,引っ越し費用もかかる。まあ,そんなのは個人的都合だが,困るのが,税金。収入が0でも退職の前年分の住民税が掛かってくる。それから,健康保険。収入にもよるが,大概は退職後2年間は,会社の健保の任意継続にした方が通常安いがそれでも現役時よりも高いのだ。それから年金。企業では厚生年金だったが,退職後は無職でも国民健康保険に加入しないといけない。これも現役中よりも高い。つまり,会社を退職した後は,収入が無いにもかかわらず,固定費的な支出は現役の時よりもずっと多いのである。

「こんな安い給料でこき使いやがって,こんな会社いつでも辞めてやる〜」
と思ったって,会社は社員に給料以外のかなりの負担をしている。私の頃で,企業が社員一人に掛ける費用は,給与分の3倍と言われていた。近年,企業が非正規雇用を増やして来たのは,そこのコストを削りたいからだ。転職に際しては,給与だけに目が行きがちだが,むしろそれ以外の部分が大きい事を認識しないといけない。

そこで,当座の生活費を稼いで貯金の目減りを緩和するため,失業給付終了後は,アルバイトをした。塾講師である。これは会社時代に既に経験があったので,だいぶ楽だった。何分昼間は会社の仕事をして,夜塾講師をしていたのだから,今度は昼間の仕事が無い分ずっと楽である。しかしながら,この塾は変な塾で,小学生から高校生までが机を並べていたのだ。大学受験の数学を指導した直後,隣の小学生の算数を見る。身体はラクでも,頭は急発進をしたり,急ブレーキを踏んだりで,ヘンな頭の使い方を要求された。

ここの塾長からは強く慰留されたが,半年ほどで辞めた。高校の常勤講師の仕事が舞い込んだのである。これは有り難かった。塾講師は何分時間が限られている。短時間であっても,ローンの残る車でガソリン使っての行き来である。多少は交通費も出ていたとは思うが。その点,高校の常勤講師はフルタイムで,企業時代なみの給与が貰えた。高校に勤めながら,夜は博士論文を書いていた。私は臨時免許の理科教員として,化学と総合理科の物理分野を教えた。そこは中堅の普通高校で一部家政科があった。普通科では化学,家政科では物理を教えた。多分初めてならば戸惑ったのかも知れないが,ここでも塾講師の経験は少なからず役立ったと思う。

生徒達には申し訳なかったが,授業の準備はしなかった。その場で教科書見ながらの授業である。化学のほうは,3クラス持っていたので,最初のクラスで内容を頭に入れ,2回目のクラスで内容をかみ砕き,3回目では大分上手くなっていたと思う。実際化学の担当教員は4人だったが,私の担当クラスの成績は,4人中で2番だった。因みに,1位は遠征などで自習ばかりの人,3位は高校で化学を取らずに大学に入った生物の人,で最下位が化学専門のベテラン教師なのであった。ベテラン教師は給料だけでも私の倍はとっていたと思うが,特に反発も感じないほど,定職は有難かった(つづく)。

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