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経営と制御

経営工学を勉強しているという方から,前回の雑文がご参考になったというコメントをいただきました。 分かりにくいところがあったかも知れませんので,補足します。私が書いた事は,以下の様なことを念頭に置いています。 ◆ 経済なり,それに立ち向かう経営というのは,そうそう精密にモデル化出来ないものだろうと想像しますので,エンジニアリングの手法はどこまで通用するのかは知りませんが,論理として正確な工学は,大枠において定性的には応用が利くのではないかと考えています(もちろん私は経営工学を知りませんので,さらに実践的な理論を学ばれていることと思います)。 ◆ 制御工学という学問があります。 工学部で機械や電気,システム工学などを専攻する学生は少なくともその基礎(古典制御)は勉強するはずです。 この学問は,18世紀末のワットの蒸気機関の発明が端緒になっているようです。 機関を実用的に利用しようとすると,機械の速度が負荷によって変動してしまいます。そこで,速くなりすぎるようだと蒸気弁を絞り,遅くなるようだと蒸気弁を開けて,運転速度を一定に保つ様にします。 それを人間がやっていてはかないませんから,自動的な仕掛けでやらせようという事になります。そこでフィードバックという概念が発生し,20世紀に入って数学や電気電子工学の理論と共に完成されます。中心課題は安定性の議論でした。 どんな装置のフィードバックの仕掛けでも,過剰に反応してしまっては,安定に動作しないのです。では反応をどのくらいに調整すればよいか?もうすこし正確に言えば,ゲインとフィードバック量をどう調整すれば,安定に運転させることが出来るか,また速度設定を変化させた時にも安定かつ最適な反応速度で運転できるかどうか。 最初はエンジニアの勘と経験で様々な工夫がされたわけですが,その後の進歩の為には数学を用いた精密な理論が必要だったわけです。現在ではフィードバックの理論はすでに古典制御と呼ばれる体系化された学問になっています。古典と呼ばれるからには,現代制御はもちろんあるわけです。複雑な経済の仕組みを解き明かすには,理想化された条件下でのみ成り立つ古典制御よりも,条件を拡大した現代制御の手法が必要なのかもしれませんが,実は,最先端のロボットなどでさえも,古典制御理論がかなり使われているのです