いつ頃からそうなったのか,あちこちの会社で,技術が引き継がれない現象が起きているようです。製造設備を入れて操業していたが,自前ではお守が出来ない。担当者がいなくなって,どうにもならない。いきおい,技術者派遣に頼ることになります。機械装置を売る商社さん。従来なら売るのが仕事だったのが,メンテナンスサービス込みでの販売になりつつあるようです。
あちこちにアウトソーシングの嵐が吹き荒れます。というか,それが経営戦略として常識になっているようです。しかし,短期と長期のビジョンは相反することもあるはずです。とりあえず,当面の利益は確保して決算を良くしなければなりませんが,企業が存続し安定成長して行くためには長期のビジョンに基づいた戦略も必要です。場当たり的に短期的利益のみ追っていては,長期の成長はもちろん存続も危ぶまれるかも知れません。
技術者の養成は当然長期的戦略ですが,当面の利益を確保するには人件費を減らすのが一番手っ取り早い事になります。正社員を減らしパートや増やす。グローバル化による競争激化を理由に,その事が合法的に行われて来ました。労務管理面においては,会社がつぶれるよりマシだろうと多少の非合法的な雇用状況でも放置されて来た面があると思います。そして,非正規雇用が技術者にまで及んでいるのが気になるところです。
若者を使い捨てにする,いわばブラック企業が社会問題化しましたが,何処からがブラックか線引きしにくい上に,それが有名企業で社会的役割を立派に果たしていれば,批判しにくい状況があります。それどころか,時代の趨勢に乗っての活動が企業経営者の才覚ならば,賞賛さえされなければなりません。民間企業は慈善事業をやっているわけではないのですから,企業としての経営活動においてその社会的使命を果たし,所定の税金等を納めていれば,その規模に応じ十分に社会的価値のある企業と言えるでしょう。
人件費に対する考え方は業界によりかなり異なるものと思いますが,短期的ビジョンにのみ左右されるようになると,弊害も大きくなります。「あっちがいいぞ」となると,こぞってそちらに走ります。景気の良いときは各社こぞって設備投資してどんどん景気が上向き消費も伸びてますます景気が良くなりますが,景気が悪くなると逆のパターンで冷え込みます。
そのような経済の波は自然現象に近いものですから,一経営者の力ではどうする事も出来ないでしょうが,それを読んで上手く乗り切るのが経営者の才覚でしょう。具体的に言えば,好不況に際し「過剰な反応をせずに次の波に備える」ことだと考えます。
空間的利用面で言えば,人の多いところに集中したり,少ないところがさらに過疎化したりと,狭い国土が有効活用されていませんが,このことは時間的にも言えて,人が動く時期は集中して,そうでない時期は閑散とする現象が発生します。そして多くの人が時間をムダにする事になります。
短期的ビジョンにのみ左右されるようになると,忙しい時はカネは使えるけども,時間が無い,不況時は,時間はあるけどカネが使えないとなり,経営資源の有効活用が出来なくなります。近年では,そこにヒトの問題が入って来たように思います。
ヒト・モノ・カネは三つの経営資源で,これがうまく揃わないと企業活動は上手く行くわけは無いですが,経済の好不況に対する,経営者の過剰反応による不安定さを防ぐ歯止めになっていたのが従来はヒトだったと思います。カネやモノは極端に調整できても,ヒトはそう簡単にはやめさせられないので一定数残る。そのため不況時は余剰人員を抱える事になります。しかし,その時は繁忙時では出来ない地道な改善活動などを行い,繁忙時にはその改善の効果が出るはずですし,不況時に定時退社でヒマだった従業員は繁忙期にはここぞと残業で頑張った。というのが,私が知るかつての元気の良かった時代の日本の製造企業の姿だったと思います。
最初の話に戻れば,技術の伝承がなく,従来出来ていたものあれもこれもアウトソーシングでますます外部に頼るしか無くなる。技術の空洞化です。カネはたまっても,ヒトやそれに付いた技術は伝承されない。短期的利益をとれば,どんどん長期的利益を損ない,先行き不透明だからますますカネは溜め込む。短期的な最適と長期的な最適は異なると言えます。
人的アウトソーシングにたよる日本企業の姿は,短期的な人件費負担の軽減を図ったが故に,長期的な安定性という自律的な安定装置を外してしまった状態と考えます。
管理者が見てなくても真面目に働くというのが日本人の美徳だったと思いますが,それも雇用が安定しているからこそのものでしょう。皆同じ事をするというのは日本人の美点でもありますが,突出した発想が出にくく,良い時は良いが,悪くなると一緒に落ち込んでしまいます。そして落ち込んでも,皆そうだからいいやとなってしまいます。そして,「我々は優れているんだから,皆自信を持ちましょう」とか言い出すとロクな事が無い様に思います。
経営者にしたら,ヒトというのは最もコストのかかるものですから,モノと同列に捉えて,なるべく安く上げたいと思うのも無理からぬことでしょう。
かつて経営の良い企業では,必要なくても銀行からカネを借りたと言います。一種の社会貢献活動だったようです。その他諸々の「社会貢献事業」もいいですが,ちゃんと正社員として一定数雇用し,雇用したらクビを切らず,社員のやる気を出させることが最も重要な社会貢献活動だろうと思います。
経営状態が良くなくて,低賃金長時間労働,福利厚生なしなど,余り従業員に還元できない零細企業ならば,褒める,表彰するなど,カネの掛からない方法で従業員のモチベーションを高める手もあります。零細企業ではキーマンが辞めてしまえば,アウトです。技術者を軽視した報いなのですが,「どこもそうしてるから,わが社も」といった安易な行動が企業体力の劣化を招きます。
「モノは無ければ,買えば良い。技術(者)も必要なら,アウトソーシングすれば良い」という,カネ第一主義になってしまったようです。技術者派遣業が繁盛しているようですが,技術屋という人種は,単に時間的にラクとか多少おカネが良い方が良いとか,そういう人たちではありませんので,そういう扱いをされると間違いなく劣化します。技術者が劣化すれば,ヒトについた技術が劣化するのは目に見えています。
あちこちにアウトソーシングの嵐が吹き荒れます。というか,それが経営戦略として常識になっているようです。しかし,短期と長期のビジョンは相反することもあるはずです。とりあえず,当面の利益は確保して決算を良くしなければなりませんが,企業が存続し安定成長して行くためには長期のビジョンに基づいた戦略も必要です。場当たり的に短期的利益のみ追っていては,長期の成長はもちろん存続も危ぶまれるかも知れません。
技術者の養成は当然長期的戦略ですが,当面の利益を確保するには人件費を減らすのが一番手っ取り早い事になります。正社員を減らしパートや増やす。グローバル化による競争激化を理由に,その事が合法的に行われて来ました。労務管理面においては,会社がつぶれるよりマシだろうと多少の非合法的な雇用状況でも放置されて来た面があると思います。そして,非正規雇用が技術者にまで及んでいるのが気になるところです。
若者を使い捨てにする,いわばブラック企業が社会問題化しましたが,何処からがブラックか線引きしにくい上に,それが有名企業で社会的役割を立派に果たしていれば,批判しにくい状況があります。それどころか,時代の趨勢に乗っての活動が企業経営者の才覚ならば,賞賛さえされなければなりません。民間企業は慈善事業をやっているわけではないのですから,企業としての経営活動においてその社会的使命を果たし,所定の税金等を納めていれば,その規模に応じ十分に社会的価値のある企業と言えるでしょう。
人件費に対する考え方は業界によりかなり異なるものと思いますが,短期的ビジョンにのみ左右されるようになると,弊害も大きくなります。「あっちがいいぞ」となると,こぞってそちらに走ります。景気の良いときは各社こぞって設備投資してどんどん景気が上向き消費も伸びてますます景気が良くなりますが,景気が悪くなると逆のパターンで冷え込みます。
そのような経済の波は自然現象に近いものですから,一経営者の力ではどうする事も出来ないでしょうが,それを読んで上手く乗り切るのが経営者の才覚でしょう。具体的に言えば,好不況に際し「過剰な反応をせずに次の波に備える」ことだと考えます。
空間的利用面で言えば,人の多いところに集中したり,少ないところがさらに過疎化したりと,狭い国土が有効活用されていませんが,このことは時間的にも言えて,人が動く時期は集中して,そうでない時期は閑散とする現象が発生します。そして多くの人が時間をムダにする事になります。
短期的ビジョンにのみ左右されるようになると,忙しい時はカネは使えるけども,時間が無い,不況時は,時間はあるけどカネが使えないとなり,経営資源の有効活用が出来なくなります。近年では,そこにヒトの問題が入って来たように思います。
ヒト・モノ・カネは三つの経営資源で,これがうまく揃わないと企業活動は上手く行くわけは無いですが,経済の好不況に対する,経営者の過剰反応による不安定さを防ぐ歯止めになっていたのが従来はヒトだったと思います。カネやモノは極端に調整できても,ヒトはそう簡単にはやめさせられないので一定数残る。そのため不況時は余剰人員を抱える事になります。しかし,その時は繁忙時では出来ない地道な改善活動などを行い,繁忙時にはその改善の効果が出るはずですし,不況時に定時退社でヒマだった従業員は繁忙期にはここぞと残業で頑張った。というのが,私が知るかつての元気の良かった時代の日本の製造企業の姿だったと思います。
最初の話に戻れば,技術の伝承がなく,従来出来ていたものあれもこれもアウトソーシングでますます外部に頼るしか無くなる。技術の空洞化です。カネはたまっても,ヒトやそれに付いた技術は伝承されない。短期的利益をとれば,どんどん長期的利益を損ない,先行き不透明だからますますカネは溜め込む。短期的な最適と長期的な最適は異なると言えます。
人的アウトソーシングにたよる日本企業の姿は,短期的な人件費負担の軽減を図ったが故に,長期的な安定性という自律的な安定装置を外してしまった状態と考えます。
管理者が見てなくても真面目に働くというのが日本人の美徳だったと思いますが,それも雇用が安定しているからこそのものでしょう。皆同じ事をするというのは日本人の美点でもありますが,突出した発想が出にくく,良い時は良いが,悪くなると一緒に落ち込んでしまいます。そして落ち込んでも,皆そうだからいいやとなってしまいます。そして,「我々は優れているんだから,皆自信を持ちましょう」とか言い出すとロクな事が無い様に思います。
経営者にしたら,ヒトというのは最もコストのかかるものですから,モノと同列に捉えて,なるべく安く上げたいと思うのも無理からぬことでしょう。
かつて経営の良い企業では,必要なくても銀行からカネを借りたと言います。一種の社会貢献活動だったようです。その他諸々の「社会貢献事業」もいいですが,ちゃんと正社員として一定数雇用し,雇用したらクビを切らず,社員のやる気を出させることが最も重要な社会貢献活動だろうと思います。
経営状態が良くなくて,低賃金長時間労働,福利厚生なしなど,余り従業員に還元できない零細企業ならば,褒める,表彰するなど,カネの掛からない方法で従業員のモチベーションを高める手もあります。零細企業ではキーマンが辞めてしまえば,アウトです。技術者を軽視した報いなのですが,「どこもそうしてるから,わが社も」といった安易な行動が企業体力の劣化を招きます。
「モノは無ければ,買えば良い。技術(者)も必要なら,アウトソーシングすれば良い」という,カネ第一主義になってしまったようです。技術者派遣業が繁盛しているようですが,技術屋という人種は,単に時間的にラクとか多少おカネが良い方が良いとか,そういう人たちではありませんので,そういう扱いをされると間違いなく劣化します。技術者が劣化すれば,ヒトについた技術が劣化するのは目に見えています。
経営工学を勉強しているKodyと申します。
返信削除ネットで記事を拝見し、大変参考になりました。
ありがとうございます。^^
http://kody-pe.jimdo.com/
Kody様,
削除私は経営を経験したことの無い元一技術者ですが,このような雑文でもご参考になれば幸いです。